増配型ETFの真価を検証|VIGに託す新NISA成長投資枠1200万の根拠
──配当成長・節税・値上がりのすべてを狙う最適解とは?
2024年から始まった新NISAでは、最大1,800万円(成長投資枠1,200万円+つみたて枠600万円)を非課税で運用でき、 長期の資産形成における圧倒的な武器となりました。
筆者はこのうち「成長投資枠(年間240万円×5年=最大1,200万円)」について、 あえてETFのVIG(Vanguard Dividend Appreciation ETF)一本で埋め切る戦略を取っています。
なぜVIG一本なのか?
それは、一度売って終わりのキャピタルゲインよりも、増え続ける配当を“非課税で一生受け取り続ける”仕組みの方が、FIREやセミリタイア後の生活資金としては圧倒的に合理的だと考えているからです。
さらにVIGは、連続増配している企業だけで構成されており、もし減配が起きれば自動的に除外されるというフィルター機能を備えています。 つまり、業績の悪い企業を自分で見極めたり売買したりせずとも、優良銘柄だけに“ほったらかしで”投資し続けられるのです。
本記事では、そんなVIG一本戦略の背景にあるロジックを、他ETFとの比較データと30年のシミュレーションを交えて詳しく解説していきます。
1. VIGとは? 配当好きが無視できない“連続増配ETF”
項目 | 内容 |
---|---|
ティッカー | VIG(Vanguard Dividend Appreciation ETF) |
投資対象 | 10年以上連続で増配している米国企業(約300銘柄) |
経費率 | 0.05%(超低コスト) |
直近利回り | 約1.78%(2025年6月時点) |
VIGは「10年以上連続で増配している企業のみ」で構成されるETF。
連続増配を“条件”としているため、一時的に減配した企業は自動除外される仕組みです。
つまり、安定した財務体質かつ成長性のある“選ばれた配当株”の集合体。
代表的な構成銘柄には、次のような企業が含まれます(2025年時点)
- Microsoft(MSFT)
- Visa(V)
- UnitedHealth Group(UNH)
- Procter & Gamble(PG)
- Johnson & Johnson(JNJ)
- PepsiCo(PEP)
いずれも世界的なブランドと安定収益を持つ企業であり、長期投資家にとって安心感のある構成です。
高配当をうたうETFとは異なり、「今ではなく将来の配当成長」に賭けるETFともいえます。2. 他ETFと比較すると、どこが違うのか?
人気の米国ETF6本を、利回り・配当成長率・トータルリターンで比較してみましょう。
ETF | 利回り | 10年配当成長率 | 10年トータルリターン |
---|---|---|---|
VIG | 1.78% | 7.39% | 11.7% |
VYM | 2.68% | 4.41% | 10.0% |
HDV | 3.49% | 5.33% | 8.3% |
VTI | 1.25% | 6.84% | 12.4% |
VOO | 1.24% | 6.28% | 13.1% |
QQQ | 0.52% | 8.79% | 18.1% |
ここで注目したいのが、VIGは利回り・成長・リターンの“全部が平均以上”という点。
- VYMやHDVほどの利回りはないが、増配力が段違い
- VTIやVOOよりは控えめなリターンだが、配当成長では勝る
- QQQほどの爆発力はないが、そのぶん安定感あり
まさに、配当と値上がりの“バランス型”ETFなのです。
3. 配当シミュレーション:10年・20年・30年後、どこまで増える?
これらの銘柄に投資した場合、各ETFの配当が元本に対してどの程度貰えるのか?をシミュレーションしました。配当は受け取りベース(再投資なし)。
ETF | 10年後 | 20年後 | 30年後 | 補足 |
---|---|---|---|---|
VIG | +25.1% | +76.2% | +180.4% | 30年で元本の1.8倍の配当 |
VYM | +32.8% | +83.3% | +161.0% | 高利回りが初期に有利 |
HDV | +44.6% | +119.5% | +245.5% | 配当“だけ”は最強 |
VTI | +17.1% | +50.4% | +114.7% | 値上がり主軸 |
VOO | +16.6% | +47.0% | +103.0% | 安定感重視 |
QQQ | +7.8% | +26.0% | +68.2% | 配当は期待薄 |
3-1. 総配当受取額の推移
ETFの分配金は、単年の利回りではなく、長期でどれだけ積み上がるかも重要な視点です。
以下のグラフは、主要ETF(VIG・HDV・VYMなど)を長期保有した場合の総配当受取額の推移を示したものです。
注目すべきは、VIGの位置の変化です。
スタート時点ではHDVやVYMよりも総配当受取額は低く、グラフでも明らかに「下」にあります。
しかし、着実な増配と再投資効果により、年を追うごとに上昇。ついには25年目あたりでHDVに次ぐ2位のポジションにまで成長しています。
これは、「配当成長型ETF」の強みを端的に示す結果です。
短期の利回りでは見えづらいVIGの実力が、長期で可視化される好例といえるでしょう。
3-2. 元本比の配当利回りの推移
もうひとつ注目したいのが、「元本に対する配当利回りの推移」です。
これは、売却せずに投資し続けた場合に、元本に対して年々どれだけの配当が得られるかという視点で、いわば“配当の育ち具合”を示す指標です。
このグラフでも、初期はHDVが圧倒的に高い位置を保っています。
一方で、VIGは序盤こそ地味ですが、着実な増配により、年を追うごとに利回りが伸び、17年目あたりで2位に浮上します。
これは、VIGが“ゆっくり確実に育つETF”であることの証明とも言えます。
配当利回りの高さだけでなく、「増配という未来」への投資であることが、このデータからも読み取れます。
3-3. トータルリターン
最後に、「トータルリターン(配当込みの総合成績)」を比較してみましょう。
価格上昇+配当を合わせた最終的な資産の増え方が、ETF選びの答えを示してくれる場面もあります。
まずは全銘柄(VIG、VYM、HDV、VTI、VOO、QQQ)を含めた比較です。
ご覧の通り、QQQの成長率が突出しており、その他のETFの差がやや見えづらくなっています。
そこで、QQQを除外したグラフでもう一度比較してみます。
このグラフからは、VIGが高配当ETF(HDV・VYM)を上回るトータルリターンを示していることがわかります。
価格上昇と増配のバランスを持つVIGは、“攻守のバランス型ETF”として優れた成果を出しています。
「今すぐ高い配当」は得られなくても、長期で見ればVIGの方がトータルで報われる可能性が高い──
このデータは、そうしたVIGの“堅実な強さ”を証明していると言えるでしょう。
3-4. まとめ:VIGは「育てる投資」
配当利回りだけを見れば物足りなく見えるVIGですが、時間と共に“育つ”性質を持つETFであることが、今回の3つのグラフから読み取れたと思います。
特に、増配率の高さ・価格上昇・総リターンのバランスは、長期目線の投資家にとって非常に魅力的です。
高配当ETFのように即効性はなくても、長期で見ればVIGが逆転する場面は確実に訪れる──そんな未来を見据えて、私は新NISAの成長投資枠をVIGで埋める選択をしています。
4. 売却することになったら──値上がりとブレ幅の比較
本来、NISAでは「売らずに済む」ことが最も望ましいです。 特にVIGのように増配が続くETFなら、配当だけで現金収入を得られるため、資産を取り崩す必要がないのが理想。
しかし、人生には思わぬ出費がつきもの。 万が一まとまった資金が必要になったとき、 そのタイミングが市場の暴落時だったら──。そのリスクも念頭に置いておくべきです。
そこで注目すべき指標が「年間ボラティリティ」です。
ボラティリティとは、価格変動の大きさを示す指標で、数値が大きいほど値動きが激しく、小さいほど安定しています。 具体的には、過去の価格データ(日次リターンなど)から標準偏差を計算し、年間ベースに換算したものです。 簡単に言えば、ETFが1年間でどのくらいブレやすいかを示す「リスクのものさし」です。
それでは、主要ETFのリターンとボラティリティを見てみましょう。
ETF | 年間リターン | ボラティリティ | コメント |
---|---|---|---|
VIG | 約11.7% | 6.67% | 配当ETFの中で最も安定した値動き |
VTI | 約12.4% | 16.6% | 全米まるごとに投資、価格は平均的にブレる |
VOO | 約13.1% | 15.5% | S&P500構成で安定性は中程度 |
VYM | 約10.0% | 14.4% | 高配当だが、価格はややブレる |
HDV | 約8.3% | 14.9% | 原油比率が高く、やや不安定 |
QQQ | 約18.1% | 26.9% | ハイテク集中型。値動き激しめ |
ご覧の通り、VIGは6.67%という圧倒的な安定性を誇ります。
- QQQのようにリターンが高くても暴落時の下げ幅が大きすぎると、現金化タイミングで大きく損するリスクがあります。
- 一方VIGは、VOOやVTIと同水準の値上がり益を狙いつつ、ボラティリティはやや控えめ。
- 暴落時に売却せざるを得なくなっても、QQQやHDVより「安心して現金化」しやすいETFです。
売らないに越したことはない。けれど、「売らざるを得ないときの備え」まで考えたとき、VIGはやはりバランスが良いのです。
5. まとめ──なぜVIG100%戦略は筋が通っているのか?
- ✅ 連続増配による複利的な“非課税インカム”成長
- ✅ 株価リターンも大きくブレにくい
- ✅ NISAの特性の配当非課税と相性抜群
- ✅ 1本で完結する管理のシンプルさ
だからこそ、筆者は「成長投資枠の全額」をVIGで埋めていく戦略をとっています。